本連載の4回目にご登場いただくのは、ラボ生産の画像レタッチ部門で活躍される稲垣 一希さん。
画像レタッチは写真を撮影した後に、要望されたものを付け足し、不要物を除去し、肌を整えるなど、繊細かつ緻密に行う職人技です。膨大な写真を取り扱うラボ生産において、スピードと品質を両立させる稲垣さん。培ってきた技術や審美眼、そして近年話題の生成AIとどう付き合っているのか、職人の視点をうかがいました。
PROFILE
稲垣 一希 さん
KAZUKI INAGAKI
広告専門のデザイン会社を経て、ラボ生産に入社。色補正をメイン業務に行うプロフォト部に所属しながら、取引先からのイレギュラー依頼でレタッチ業務も行う。営業拡大に伴い、新たにレタッチ専門の画像加工データグループが新設されたときに配属され、現在まで所属している。
「ここまでやってくれるのか」と思わせるくらい完成度が高いものにする。
ラボ生産の川口ラボには、さまざまなイメージング商品を製作する大型機材が立ち並ぶ。また、その隣の部屋にはデスクトップパソコンが立ち並び、お客さまの希望を実現するために、画像1枚1枚をレタッチしている職人たちがいる。稲垣さんは職人たちの中でも高い技術と審美眼を持ち、ラボ生産の画像加工グループを牽引する。そんな稲垣さんに画像加工を始めたきっかけを訊いた。
「幼少のころは、漫画などの影響で絵を描くのが好きでした。その後、筆や絵具はいらず、パソコンとPhotoshopさえあれば、写真を思うがままに編集できる点をとても魅力的に感じ、画像加工に没入しました」
稲垣さんはその後、広告専門のデザイン会社でポスターデザインなどの経験を経て、ラボ生産に入社。入社直後は主に色補正を行う部署に所属しながらレタッチについても並行して学んでいた。そんな中、大型の取引先から受注を取るためにレタッチ部門のグループが新設され、そのメンバーに抜擢される。
「最初はレタッチ技術のインプットと平行して取引先からいただいた受注案件を行っていました。 知識も技術も豊富な点を評価していただき、大型取引先を獲得することができました。先方の担当者に画像加工をお見せしたところ、そこまでやるのかと言われたことがとても嬉しかったです」
一生の写真なので、悔いがないように。
一生記憶に残る晴れ舞台で、運悪く天候が悪かったり、衣装の忘れ物をしたり、理想の体型ではなかったりと、写真に残ったときの後悔をなくすことができるのがレタッチ業務だと言う。
「体型や肌の調整から、天候までも変えることができます。例えばお子さんの七五三で履物が片方なくなってしまったときに、レタッチで履物をはいているように加工しました。そのときにいただいたお喜びの声がとても嬉しかったです」
稲垣さんがレタッチする写真のビフォー・アフターを見せてもらうと、まるで魔法をかけたように写真が変わっている。今まで、技術的な課題に直面したことがあるのか尋ねた。
「今まで技術的に難しいと思ったことはありません。ネットなどでできないことを調べたら先人たちの解決策がすぐに出てきます。画像加工の作業がとても好きなので、常に楽しく作業しています」
生成AIが進化する中で、レタッチ業務において、どう付き合っていくのかを投げかけた。
技術は大差がなくなっていくので、判断の目が重要
「生成AIが進化しているため、ある程度のレタッチ技術はAIを使えば誰でもできるようになってきます。ただ、どこを・どこまで・どう加工するのかなどは、長年培った判断の目が必要になります。そのため、目を肥やしていくことが大切です」
稲垣さんは今後、どういった展望を描いているのか訊いてみた。
「生成AIは手段であり、目的はお客さまの要望に応えること。現在は現場での作業より、人に教えていく作業の方が多いです。レタッチよりも難しい作業ですが、長年培った判断する目を伝えられるようにしていきます」
INAGAKI'S WORKS
ウエディングフォトのレタッチ
一生残る写真を後悔がないカタチへ
レタッチ業務の多くは、七五三やウエディングなどの人生の晴れ舞台が多い。その中でもウエディングは、長年夢見ていたウエディングドレスを着て写真に残す。理想の体型ではなかったり、当日のメイクが落ちてしまったりと、写真残すのが嫌にならないように、稲垣さんはお客さまの要望に合わせて体型から肌の調整、手にする花を増やすことさえ可能にする。
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