本連載の2回目に登場いただくのは、しまうまプリントのデザイン部を牽引するイ・ヒョンギ(李 賢基)さん。キタムラ・ホールディングス グループの中でも、しまうまプリントのデザイン性の高さはよく知られています。デザイン部は2025年4月に満を持して販促部から独立しました。初代部長となったヒョンギさんにデザインの仕事とは何か、デザイナーとしての美学――について語っていただきました。
PROFILE
イ・ヒョンギ さん
HYUNKI LEE
韓国ソウル生まれ。韓国の美術大学を卒業後、米国サンフランシスコの美術大学に留学。デザインを学ぶ。帰国後、広告代理店でグラフィックデザイナーとして勤務。2012年に来日。映像やイベントの仕事からゲームやIRのデザインまで幅広い分野で活躍。2023年、しまうまプリントに入社。フォトブックなどのデザインを手掛けている。
デザイナーの仕事というのは、モノの魅力をきちんと伝える方法を考えることなのです
小学生のころからモノ作りに関心があったというイ・ヒョンギさん。デザイナーの原点はアメリカのMTV(MUSIC TELEVISION)との出会いだった。それまで耳で聴くことが中心だったポップミュージックの世界に映像(=プロモーションビデオ)を大胆に取り入れ、1980年代以降、音楽の在り方を変えたといわれる伝説的なチャンネルがMTV。ヒョンギさんの経歴をたどると、MTVに惹かれてデザインの世界で活躍してきた姿が浮かび上がってくる。
「韓国でデザインの仕事をしていましたが、2012年に来日して初めて働いた企業は韓国系のケーブルテレビ局。仕事は現場のADでした。ADといっても、デザインの方向性を決めるアートディレクターではなく、局のアシスタントディレクターで、番組の予告編なども手掛けていました」
アシスタントディレクターとして多忙な日々を過ごした後も、ゲームデザインをはじめコーポレート広報や宣伝、ロゴ制作、ブランド管理など幅広い領域を自在に泳ぎ回り、いまでも「新規事業に関わるのが好き」と屈託のない笑顔を見せる。
そこで、しまうまプリントのデザインをつかさどる立場として、何を成し遂げたいのか訊いてみた。
しまうまファンを増やしてきたい
「しまうまプリントのサービスは、品質が良くて価格が安いのが魅力です。世間もそう認識しています。それは大切なことではあるけれど、私はしまうまの価値をもっと上げたい。それをデザインのチカラでできたらいいですね」
ユーザーがしまうまプリントのイメージを思い浮かべるとき、機能性の良さやコストパフォーマンスの高さが挙げられる。加えて、ヒョンギさんは「デザインで選ばれるしまうまプリント」でありたいと考えている。そのためには、“偶然にできあがった優れたデザイン”ではなく、美しいデザインを生み出す土壌やフィロソフィを作り上げようとしているのだ。
写真プリントもフォトブックも生活必需品ではない。なくても、生活には困らない。「だからこそ、熱心なしまうまファンを増やすことが重要」なのだとヒョンギさんは話す。
大学時代、リブランディングに興味を持ったこともあって、「領域を超越して、プロダクト、ロゴ、アプリ、そしてブランディングに至るまで、すべてが統一されたコンセプトで考えられるトータルデザインに魅力を感じていました」というヒョンギさん。そんな背景から、しまうまらしさをトータルに表現することに思いを馳せる。
「しまうまには、いままでも魅力的なデザインは存在していました。ただ、より表現に一貫性があったものになれば、もっとしまうまらしさがお客さんに伝わる。そのために、優れたデザインの在り方を設計していきたいですね」
デザイナーを育てるのが私の仕事
それでは、ヒョンギさんにとって、デザインとはどんな仕事なのだろうか。
「見た目をカッコよくする仕事というのとは、ちょっと違いますね。それと、依頼者のために答えを探すのがデザイナーであり、重要なのは私の好みというよりも、答えに合う適切な表現方法です。もちろん、ユーザーの手に届く最終的な形を作るのはデザイナーですから、見た目が全く関係ないということではないのですが、言ってみれば、モノの魅力をきちんと伝える方法を考えることです」
そして、将来の夢について問うと、「デザイナーを育てること」と即答だった。ヒョンギさんの下には6名のデザイナーが所属。35歳前後が多いというメンバーそれぞれがディレクターとして活躍できるような体制を作りたいと言葉に力を込める。
「それが私の夢であり、仕事だと思っています」
HYUNKI’S WORKS
しまうまブック
シンプルでカラフルなデザインで人気上昇中!
入社以来、ヒョンギさんが心血を注いできたフォトブック。UIUX設計から参加、快適な操作で簡単に作れる世界を実現するために、改修を重ねながら完成させた。また、作る楽しさをお客さまに伝えるために、表紙デザイン、メインビジュアルのコンセプトなどをディレクションした。
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