今回はフォトクリエイトの新サービス「こみるこ」について、フォトクリエイト スクール 事業統括 門松 信吾さんにお話をうかがいました。立ち上げの経緯やこれまでの経験を踏まえた新規事業への想い、今後の展望についてお話しいただきました。
こみるこに込められた想い
プロジェクトの立ち上げやサービス誕生にはどのような背景があったのでしょうか
私が責任者をしているスクール事業では、少子化が進んでいることに危機感を持っています。少子化の影響で幼稚園や保育園など施設の規模が縮小していくと売上の見込みが立たなくなり、カメラマンの派遣と撮影が難しく、子どもたちの思い出を残すことができなくなってしまう可能性があることが課題です。
スクール事業では、「子どもたちの体験を彩り続けるスクールフォトエコシステムをつくる」というビジョンを掲げています。写真は時を経ても子どもたちの体験を彩り続けてくれるものだと信じており、それを実現するためにカメラマンなどさまざまな関係者を含め、どのようにして持続可能なエコシステムを作っていくのかが重要だと考えます。そこで、プロカメラマンが撮影できない領域の写真や思い出をどのようにしてカタチに残すかに焦点を当て考えたのが自動撮影カメラでの撮影であり、こみるこが生まれたきっかけです。
幼少期の貴重な時間を思い出として形に残すことは大切ですよね。自動撮影カメラとプロカメラマンの写真では雰囲気がずいぶんと異なりますが、こみるこならではの魅力を教えてください
私たちが考える質の高い写真は「プロのカメラマンが意思をもってシーンを切り取ったもの」かつ「保護者に求められるもの」です。現状、自動撮影カメラでは、プロが撮影した写真と同様のクオリティを求めることは難しいです。しかし、自動撮影だからこそ「今まで撮りに行けなかったシーン」や、先生の負担が大きく撮りきれなかった「量」を実現できるなどのメリットがあります。こみるこでは、自動撮影カメラで撮影したコンテンツの価値を、写真の質ではなく量にあるという視点でサービスを組み立てています。
幼稚園や保育園の保護者の目の届かないところの日常を撮って毎日配信してくれるとなると、保護者からしてみたら新しい魅力があるのではないでしょうか。例えば、「うちの子はこんな顔をして遊んでいるんだ」「お友達とはこんな関係性なんだ」といったことは、先生が書いてくれる100字程度のお手紙からも伝わってきますが、100枚の写真のほうがその日の姿を表現してくれていて、より想像しやすくありありと伝わってくると思います。それを継続できるのが自動撮影カメラの価値であると考えます。
また、せっかく「量」を撮影しているのであれば、これを先生たちの業務支援に使えないかということで開発したのがこみるこの「連絡帳AI」機能です。保育園では子どもたちの様子を保護者に伝えるために連絡帳を使っているのですが、最近ではその連絡帳もデジタル化が進んでいます。従来紙で書いていたものが、デジタルで入力できるようになったため、多少楽になったということはありますが、それでも先生は子ども一人ひとりに対してその日の活動の内容を思い出し、その子の様子を言語化せねばならず手間がかかっています。こみるこではたくさんの写真でその日の様子を残しているからこそ、この「思い出す」「言葉にする」という部分をAIの力を使って支援しできないかと考えました。連絡帳AI機能では、子どもごとのその日の活動の写真から、連絡帳に使える子どもの様子の文案を自動で作成しています。使い始めた先生からは、「これなしには連絡帳が書けなくなった」といった嬉しい声もいただいており、たくさん写真が撮影されると保護者も先生もどちらも嬉しいという価値提供ができるようになりました。
新規事業としてのこみるこ
こみるこプロジェクトチームの仕事内容をぱっと思い浮かべるのが難しいのですが、どのような業務をされているのでしょうか
主に事業開発や営業を行っています。新規事業は成り立つか成り立たないかの検証が大切なので、検証するチームとして立ち上がりました。その他にもシステム制作やデザイン、事業全体を構築するにあたっては、別にある事業開発チームや、開発部のエンジニア、デザイン部にいるデザイナーをプロジェクトとして招集し、開発しています。
検証することが大切なんですね。新規事業を行う上での検証のポイントや、ほかにも大切なことがあれば教えてください
新規事業は「誰の・何のお困りごとをどのように解決するのか」がとても大切だと思っています。企画のアイデアは検証してみないと想像・仮説の域を脱しないので、立てた仮説が正しいかどうかを様々な角度から検証する必要があります。
例えばこみるこは、「先生たちは写真撮影の業務を負担に感じているのではないか」といった部分が仮説です。それが本当にお困りごとなのか?お困りごとなのであれば確実に自動撮影カメラで解決できるのか?ということを実証していかねばなりません。つまり、新規事業においては「現場・現物・現実を見て学ぶ」ということにどれだけフォーカスできるのかが重要です。
加えて、事業の進め方として、まずは「小さく」始めることがポイントです。本当にこのモデルが成り立つのか検証しきったうえで拡大させていくことで、検証のポイントを見失うことなく進めることができます。
また、忘れてはいけないのは「どんな世界をつくっていきたいのか」「なぜ自分たちがやるのか」からぶれないこと。ビジネスなので当然お金も大切ですが、お客さまが価値を感じていただけるまでやり抜くことができれば後からでもついてきます。お金に見合った価値提供をしていくことで、求められるサービスになっていくのではないかと思っています。
新規事業に取り組む際の大切なことをたくさん教えていただき、ありがとうございます。では、実際サービスの開発に取り組むうえで苦労したことや嬉しかったことはありますか
自動撮影カメラの特性ゆえに、園の先生たちからは「どんなものかよくわからない」「監視されているようで怖い」といった声が多く、それが第一関門でした。身近に感じていただくために、電源の自動オンオフ機能や、いいシーンのみを感じとって撮影してくれることを伝えるようにしました。
このサービスは、先生の運用の負担をどれだけ減らせるかがポイントです。負担が減れば撮影と配信を毎日行ってもらうことができ、保護者も子どもの日常が見られて嬉しいという好循環が生まれます。しかし、導入自体を負担に思われている側面もあるので、私たちももっと工夫が必要だと思います。そういうところが苦労しているポイントです。
やってよかったなと思うのは、日常の写真を共有することで保護者と子ども、子どもと先生、先生と保護者の三者間のコミュニケーションが豊かになったということが感じられるときです。少子化によって園児の取り合いが起こる中、先生たちは保育の見える化を図り、選ばれる園になるための努力をしています。写真を通して生まれるコミュニケーションが、そこに貢献できていることが嬉しいです。
思い出が残り続ける社会の実現を目指して
最後に、今後の展望を教えてください
先生たちの負担が減って、毎日継続的に写真を撮影し、配信していただけることをひとつの指標としています。連絡帳AI機能を提供しはじめたことで、自動撮影カメラだけでなく、先生が撮影した写真も連絡帳AIに使いたい・配信したいというニーズが増えました。そこで、自動撮影カメラだけにこだわらず、他の手段で撮影した写真も使えるようにしています。加えて、保護者側の機能を充実させた有償プランの加入率を増やすには、保護者が喜ぶ価値提供を探っていく必要があると考えています。そのため、大事なことはまずは先生たちの課題解決すること。その後に、保護者たちにより価値提供するためには何をしていくのかということを考えていきたいです。
こみるこは、フォトクリエイトサービスのなかでも顧客との接触頻度が限りなく高い。週に何回も私たちが保護者と接触ができるということを活かして、保護者側にさらに新しい価値提供を広げていけたらいいですね。
門松さん、ありがとうございました!
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