フィルム写真を軸にした写真展が大盛況
若年層の間でフィルム写真のブームが到来し、PENTAX 17を始めとした新しいフィルムカメラが発売されるなど、そのブームは一過性のものとして冷めることなく一種の文化として成長を遂げました。
そんな中、そのフィルム写真文化を継承する活動のひとつとして、複数の大学で連携して活動をしている学生団体「grayn(グレイン)」が、2026年3月15日(日)~3月21日(土)の間、 新宿 北村写真機店で写真展を開催しました。写真展のテーマは「なぜ今フィルムなのか」。写真展参加者が、フィルムで写真を撮り続ける理由に向き合いながら制作した作品が約50点展示されました。写真展では、約350件以上のアンケートの回答が寄せられ、大好評で幕を閉じました。
今回の記事では、「grayn」メンバーへのインタビューと写真展に合わせて開催されたトークショーの内容を紹介します。トークショーには、元ニコン開発本部長で「ミスターニコン」と呼ばれる後藤 哲朗さんやユー・シー・エス(以下、U.C.S)代表取締役社長の中島 一憲さんらが登壇。大いに盛り上がりを見せました。

若者が魅了されるフィルム写真の魅力
今回の写真展の企画・運営の核となり活動している田口 睦大さん。「grayn」の活動内容や活動を通して感じていることについてインタビューしました。
田口:graynは フィルムの現像とプリント作業を行う暗室こそ写真文化の要であると考え、その継承を目的にしている団体で、主な活動は大きく分けて3つです。①今回のような写真イベントの企画・運営 ②撮影会の実施 ③暗室講習の実施です。

フィルム写真の魅力を共有し合える仲間に出会えるきっかけとなる今回のような写真展の開催や、フォトウォークのような撮影会も実施しています。実際、graynの活動をきっかけにフィルム写真に興味を持ってくれた人や、元々興味があったけれどさらにのめりこむようになった人もいて、フィルムで撮る写真の魅力の大きさを改めて実感しました。
また暗室講習では、フィルム写真を撮っていく上で必要不可欠な暗室での現像やプリント技術に興味がある人に対して、ノウハウをレクチャーしています。フィルムで写真を撮ることの難しさを解消したり、はたまたよりフィルム写真の魅力を深く知ってもらうことができるのではないかと考えているからです。

僕自身は、カメラを始めて約10年が経ちます。デジタルカメラを使っていたのは最初の一年ぐらいで、それ以降はずっとフィルムカメラを使っています。フィルムカメラは、デジタルカメラに比べて不便なところも多いですが 、それ以上におもしろいと感じることが多いです。僕がフィルム写真を楽しんでいるからみんなにも知ってほしい、という部分も少なからずありますが、こんなに魅力的な文化を途絶えさせたくないという想いが活動につながっています。フィルム写真文化を途絶えさせないよう、この活動を続けていきたいです。
フィルムカメラの修理技術の継承で写真文化の未来を支える
また、今回graynが開催した写真展では、3月21日(土)にフィルムカメラの「技術継承の難しさ」をテーマにトークショーが開催されました。トークショーでは、フィルム写真の文化を未来につなぐために大切な要素となる、「フィルムカメラ修理」にスポットライトが当てられました。トークショーでは、ニコンの主要機種シリーズの開発に携わった後藤 哲朗氏、graynの創設に携わった 原田 知幸氏、カメラのキタムラの中古カメラの修理やメンテナンス業務を行っている株式会社U.C.S代表取締役社長の中島 一憲氏、ニコン機械式カメラ・レンズを専門に修理を担当する同社・名誉顧問でフォト工房キィートス共同創業者の國井 猛”國井 猛 氏の4名が登壇しました。 そのトークショーの内容を一部抜粋してご紹介します。

後藤:なぜ、フィルムカメラの技術継承が今必要とされているのでしょうか?
中島:デジタルカメラよりも、フィルムカメラの修理の方が継承の難易度が圧倒的に高いです。デジタルカメラもデジタルカメラの難しさがもちろんあるのですが、デジタル技術であるため、その技術の継承方法も手法が確立されている分野となります。一方、フィルムカメラはマニュアルや図面はあるものの 、実際は手で調整をしてそのカメラの個体に応じた細かい調整が必ず必要になるため、ある程度経験に基づいた『勘所』が必要なことが、難易度を上げています。
それは、暗室での現像やプリント技術と同じで、一度途切れてしまうとその技術を継承することはできなくなってしまいます。だからこそ、人から人へつないでいくことが今必要なのです。

國井:私は昭和39年にカメラ修理に携わるようになり、今年で82歳を迎えますが、まだまだ勉強しなければいけないことがあるとたくさん感じます。カメラの修理技術は、1週間や2週間で身につくものではありません。何千台も分解しては組み立てることを繰り返してようやく自分のものになります。
中島:國井さんのおっしゃる通り、こういった職人技は自分で手を動かしながら学んでいく必要がありますが、昔のようにベテラン修理士の背中に張り付いて、その手法について学ぶことは非常に難しくなっています。そのため当社では、ベテラン修理士の作業を動画アーカイブで残す「修理技術のDX化」にも取り組み、体系的に修理を学べるように進めています。
当社では今 、積極的に若手の採用に力を入れています。若い世代ほど、こういった技術の尊さをよく知っていて、意欲的に業務に取り組む方も多く見られます。カメラのキタムラには日々多くのカメラが集まってきており、カメラのキタムラのグループ会社である当社は、修理技術を磨く経験を積む環境としてうってつけの場所です。 キタムラグループが持つ基盤やデジタル技術によって 技術継承を支えて促進させることで、日本が持つこの尊い修理技術を未来に継承していければと考えております。
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